「イラストレーターさんにイラストを頼みたい」。そう思うことはありませんか?
一昔前までは、イラストは出版社などのメディアがプロのイラストレーターさんに頼んで掲載するもの、というイメージがありました。
でも、いまは個人ブログやYouTubeなど、誰でもメディアを持てる時代。自分が頼んで描いてもらったイラストを使えば、フリーの素材を使うよりもオリジナリティを出せますし、コンテンツのアクセントにもなります。また、仕事のプレゼン資料などに使いたい、といったケースもあるでしょう。
ふだんはイラストレーターに縁もゆかりもない人でも、イラストを頼める時代になっているのです。
一方で、誰もが頼める時代だからこそ起こるトラブルもあります。
では、実際どのようにイラストを依頼すればいいのでしょう? 今回は、ブログに掲載するイラストを実際にお願いしてみました。
そのときの様子をレポートしながら、頼む側も頼まれる側も気持ちよく作業を進められる「上手にイラストを依頼するコツ」を紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
【準備】依頼する内容をしっかり決める
イラストを依頼する前にしっかり準備をしておくとうまくコトが運びます。イラストレーターさんに良いイラストを描いてもらうために、以下のポイントをおさえておきましょう。
[準備その1]イラストの内容を決める
当然ながら、イラストレーターさんに連絡する前に「どんなイラストを描いてもらうか?」をあらかじめて決めておく必要があります。
まず意識したいのは下記の5点です。
- どこに載せるイラストなのか?
- イラストの目的は?
- どんなイラストを描いてもらうのか?
- イラストの点数・予算・納期は?
- イラストのサイズ・解像度・納品(ファイル)形式は?
順番に説明していきましょう。
1.どこに載せるイラストなのか?
発注する側としては、「イラストを描いてもらおう」と思った時点で、どこに使うイラストなのかは明白でしょう。しかしながら、イラストレーターさんが「イラストを載せたい(載せてもいい)」と思えるかどうかは、あらためて確認しておきます。
「自分の描いたイラストがどんなふうに使われるのか」は、イラストレーターさんがもっとも気になることのひとつです。掲載のされかたによっては、依頼を受けてくれないでしょうし、断る権利もイラストレーターさんにはあります(極端な例では、犯罪を冗長するサイトに載せるイラストは描いてもらえないでしょう)。
また、掲載場所がウェブサイトなのか紙媒体なのか、広く一般の人の目に触れるのか、特定の人だけが見るのかなども、イラストレーターさんが知りたい情報です。
まずはそれらの点を確認しておきましょう。
2.イラストの目的は?
そのイラストが、記事の内容をわかりやすくする〈説明イラスト〉なのか、記事のアクセントとして載せる〈イメージイラスト〉なのか、という点もイラストの描き方にちがいが出てきます。
前者は、たとえば何かの手順を説明するなら、ポーズなどを正確に描く必要がありますし、後者ならそれほど厳密さはいらないかわりに、背景まで描き込んでもらったほうが効果的かもしれません。
「○○○を目的としたイラストをお願いします」と依頼時に伝えられるようにしておきましょう。
3.どんなイラストを描いてもらうのか?
これがもっとも重要であることは言うまでもないでしょう。ただ、「どこまで具体的に決めればいいのか」は悩ましいところです。
「細部まできっちり構想ができている」という場合は問題ありません。
けれど、実際「漠然としたイメージはあるけど、具体的にどんな絵柄にすればいいかわからない」というケースも多いもの。その場合は、「イラストレーターさんと一緒に考える(あるいは考えてもらう)」という方法を検討します(くわしくはのちほど)。
4.イラストの点数・予算・納期は?
「イラストをいつまでに仕上げればいいのか」「何点仕上げる必要があるのか」「報酬はいくら払ってもらえるのか」。これらはイラストレーターさんが仕事を受ける・受けないの重要な判断材料です。
納期や予算はべつにイラストの依頼に限った話ではなく、どんな仕事であれ、忙しくて手が空いてなければ受けたくても断らざるを得ないでしょうし、手間のわりに報酬が見合わなければ、やはり受けられないでしょう。
「納期はべつに決まっていない。予算も相場がわからないから伝えられない」というときもあるでしょう。その場合は、イラストレーターさんと相談しながら、双方が納得できる線を探っていきます。
ただ、「どのくらいまでお金を出せるか」は事前に考えておくとスムーズです。
イラストの点数については、「イラストを頼もう」と思うと同時に決まるわけですが、「合計○点で○○円」といったトータルの予算を考えておきましょう。
5.イラストのサイズ・解像度・納品(ファイル)形式は?
イラストのサイズや解像度も重要な情報です。そもそもどのくらいの大きさで描けばいいかわからなければ着手すらできません。
〈解像度〉は大きく分けて「サイトなどの画面表示に使うのか」「印刷する媒体に載せるのか」で変わってきます。具体的な数値がわからなければ、イラストレーターさんには「画面表示用」「印刷用」のいずれかだけでも伝えるようにしましょう。それに合わせて適切な〈解像度〉で描いてくれるはずです。
解像度は一般的に
- ウェブサイト……72dpi
- カラー印刷……300dpi
- モノクロ印刷……600dpi
と覚えておくと便利です。
イラストの納品形式には主に下記のものがあります。
- PSD形式(Adobe Photoshopファイル)
- AI形式(Adobe Illustratorファイル)
- JPEG形式
- PNG形式
不慣れな人は「どうすればいいの?」と途方にくれてしまうかもしませんが、「その形式を扱えるアプリを持っているか」で判断すればいいでしょう。
たとえば、PSD形式はAdobe Photoshopでないと開けないので、Photoshopを持っていないのなら、別の形式で納品してもらうわけです。
実際のところ、なにもわからないのであれば、JPEG形式でファイルをもらうのが無難でしょう。汎用性が高く、さまざまなアプリで扱えるからです。
納品形式についても、イラストレーターさんに相談してみるのがいいでしょう。適切なアドバイスをしていただけるはずです。
[準備その2]参考になる資料を用意する
具体的なイメージをコトバで伝えるのが難しいのであれば、資料を用意し、それを参考にして描いてもらう方法があります。
「だいたいこんなポーズで」というのであれば、そのポーズをとっている画像やイラストを見せればいいですし、「こういうカタチの車に乗っていて」であれば、車の資料を用意します。
具体的な参考資料をもとにすれば、「資料の車は黒だけど、白にしてください」「資料では笑っていますが、イラストでは怒った顔に」などと頼むことで、こちらの要望を正確にイラスト化できます。
[準備その3]依頼の方法を検討する
イラストの内容が決まったら、「だれにどうやって依頼するか」を検討します。以下の選択肢が考えられます。
- 知人のイラストレーターに依頼する
- イラストレーターのサイトから依頼する
- SNSから依頼する
- 発注サイトで依頼する
これも順番に見ていきましょう。
1.知人のイラストレーターに依頼する
すでに知り合いにイラストレーターさんがいるのなら、その人に頼むのがいいでしょう。雑誌や書籍などのメディアでは、「すでにお付き合いのあるイラストレーターさん」にお願いするケースがほとんどです(新しい人を発掘することもありますが)。
とはいえ、イラストレーターさんの知人がいる人は多くないでしょう。また、知人がいたとしても、描いてもらいたいイラストと、その人の画風やテイストが異なる場合もあります。そういうときは、やはり知人以外に頼ることになります。
2.イラストレーターのサイトから依頼する
知人ではないけれど、頼みたいイラストレーターさんがいるのなら、その人のウェブサイトをチェックしてみましょう。たいてい自分の作品などを載せたポートフォリオ代わりのサイトを持っています。「お問い合わせ」のフォームを設けている場合も多いので、そこから連絡してみるのです。
ただ、イラストレーターさんは、「どんな人が発注しているのか」という点をとても気にします。「むやみに修正ばかりをさせられるのではないか?」「きちんとお金を払ってくれるだろうか?」と心配になるわけです。「いや、自分は違う」と言っても、実際その手のトラブルは多いので、疑心暗鬼になってしまうのです。
きちんとしたメディアや会社ならともかく、まったく無名の個人が依頼すると、なかなか受けてもらえないかもしれません。実際、私も何人かのイラストレーターさんにウェブサイトからご連絡したことがありますが、(個人としての依頼だったからでしょう)いずれも受けてもらえなかった経験があります。
3.SNSから依頼する
TwitterやPixivといったSNS(もしくはそれに準ずるサービス)で作品を発表しているイラストレーターさんは多くいます。SNSなら連絡のハードルが低いですから、頼みやすい方法といえます。
ただ、これも上記の「2.イラストレーターのサイトから依頼する」場合と同様に、個人からの依頼は受けてもらえない可能性があります。
4.発注サイトで依頼する
1〜3は、じつは個人としてイラストを依頼する場合、受けてもらえる可能性が低く、よい方法とはいえません。
そこでおすすめしたいのが、「発注サイト」を利用することです(「コミッションサイト」「マッチングサイト」「専門サイト」とも呼ばれます)。
「発注サイト」とは、登録されているイラストレーターさんの中からお気に入りの人を見つけて、イラストを依頼できるウェブサービスです。膨大な数のイラストレーターさんが登録されているので、条件や希望に合う人に依頼できます。
また、イラストレーターさんとはサイトのメッセージ欄でやりとりをし、お金の支払いもサイトから行ないます。「言った言わない」のコミュニケーション上のトラブルや、「料金を支払わない」「支払ったのに描いてくれない」といった金銭的トラブルを避けることができるのも魅力です。
個人でイラストを依頼するなら、「発注サイト」がベストな選択肢といえるでしょう。
【実践レポ】イラストレーターさんに依頼してみた
さて、今回は実際にイラストレーターさんにイラストを依頼してみました。これまで紹介してきたポイントを具体的にどう実践したのか、レポートしていきましょう。
[実践その1]イラストの内容をしっかり決めた
まずは、イラストの内容を決めていきました。ポイントを復習しましょう。
- どこに載せるイラストなのか?
- イラストの目的は?
- どんなイラストを描いてもらうのか?
- イラストの点数・予算・納期は?
- イラストのサイズ・解像度・納品(ファイル)形式は?
今回は次のように決めていきました。
1.どこに載せるイラストなのか?
今回は、趣味でやっているブログの記事にイラストを掲載することにしました。
記事はホラー作品のレビューですので、反社会的な内容ではなく、イラストレーターさんがイラストを載せるのを嫌がるようなものではないはずです。
2.イラストの目的は?
今回は、“ホラーな雰囲気”を盛り上げることを目的としました。つまり、〈説明イラスト〉ではなく〈イメージイラスト〉ということになります。
3.どんなイラストを描いてもらうのか?
心霊ビデオについて述べた記事ですので、〈幽霊〉を描いてもらうことにしました。
問題は、「どんな幽霊?」ですが、依頼の時点では良いアイディアが浮かびませんでした。
本来なら、イラストレーターさんにイメージを膨らませてもらえる資料を用意すべきなのですが、今回は相談しながら探っていくことにしたのです。
4.イラストの点数・予算・納期は?
点数は、記事には大きな見出しが3つあるので、それぞれの見出しの下にイラストを入れるとして、合計3点。
予算は、趣味のブログでもあり、それほどお金が出せるわけではないので、1点3000円ぐらい、合計3点で1万円ぐらいを想定しました。
納期は、とくに決めず、これもイラストレーターさんの都合に合わせて決めることにしました。
5.イラストのサイズ・解像度・納品(ファイル)形式は?
サイトの本文の横幅いっぱいに描いてもらうとして、横は1000ピクセル。縦はその半分の500ピクセルとしました。
解像度は、72dpiでもいいのですが、大きく使う可能性を考慮して、150dpiに。
ファイル形式はPhotoshopで読める形式(PSD)でお願いすることにしました。
[実践その2]依頼の方法を検討した
今回のようなイラストをお願いできるイラストレーターさんの知り合いはいませんし、無用なトラブルを避けるためにも、発注サイトを利用することにしました。
現在、イラストを頼める発注サイトは、おもに以下のものがあります。
では、上記のうちどのサイトを選べばいいのでしょう?
[実践その3]イラストレーターさんを探しながら発注サイトを選んだ
まずは、上記3つのサイトにアクセスして、以下の条件でイラストレーターさんを探してみました。
- イラストのタッチ
- 予算・納期
- キャリア
- その他
つまり、「条件に合ったイラストレーターさんが登録されている発注サイト」を選ぼうという作戦です。順番に説明していきましょう。
1.イラストのタッチ
サイトにアクセスし、イラストレーターさんのサムネイルを見ていきます。サムネイルで「1.イラストのタッチ」を判断していくわけです。イラストレーターさんのタッチを見ることによって、逆にどういう雰囲気のイラストにすればいいか、自分の中でもイメージが固まっていきます。
イラストレーターさんの数は膨大ですが、圧倒的多数が“萌え絵”(美少女のイラスト)を描く人たちでした。しかし、今回お願いするのはホラー記事に載せる〈幽霊〉ですから、そういうテイストの絵が描ける人でなくてはなりません。
そこで、サイトの検索機能を使い、ふるいにかけました。頼むべきイラストのイメージがはっきりしてくると、検索キーワードでかなり絞れるわけです。
今回は、「リアル」とか「ホラー」「ダーク」といったキーワードで絞りこんでいきました。
2.予算・納期
「2.予算・納期」も重要な判断基準です。そもそも予算や納期が条件に合っていなければ、依頼できないからです。
今回は「1万円」の予算で描いてくれる人を探しました。これも検索機能が重宝します。
なお、納期は、今回は考慮しませんでした
3.キャリア
じつは今回はあまりキャリアの長くない人を探しました。というのは、一般的にキャリアの長さと料金は比例するからです。キャリアが長ければそれだけ上手い人が多いのですが、料金も高くなります。また、キャリアが長く人気の高い人は、なかなか受けてくれない(もしくは納品まで時間を要する)傾向にあります。
もちろん、ケースによりますが、今回は趣味でお願いするイラストなので、「プロフェッショナルというより、副業や趣味でやっているイラストレーターさん」を想定して探してみました。
4.その他
その人がどんなジャンルのイラストを得意としているか、などといった点も確認していきます。「かわいいイラストが得意」「動物も描けます」といったアピールポイントも加味していくわけです。
今回は「リアルなタッチが得意」「ダークな雰囲気が好み」といったコメントの付いている人を中心に探しました。
また、イラストレーターさんの中には「商用のみ受注」「アダルトは不可」などとお断り書きをしている人もいます。そういった条件もチェックしていきます。
以上のような観点から、膨大な数のイラストレーターさんからふさわしい人を時間をかけて根気よく探していきました。
その結果、SKILOTS、SKIMAではふさわしい人がおらず、ようやくココナラで1人のイラストレーターさんが見つかりました。
もちろん、SKILOTSやSKIMAがココナラより劣っているわけではありません。どのサイトで見つかるかはケースによるわけです。
ちなみに、個人的な印象では、SKIMA < ココナラ < SKILOTSの順で、キャリアが長く(したがって料金が高い)イラストレーターさんが多いようです。
[実践その4]イラストレーターさんに連絡してみた
今回は、タガッシュさんにお願いすることにしました。早速、メッセージ欄から連絡。
実際に送信した内容は以下のとおり。これまで説明してきたように、イラストレーターさんが仕事を受けるかどうかを判断できるように、必要な情報を要領よく盛り込みました。
タガッシュ様
はじめまして。
このたびはお世話になります。
「ぎゃふん工房」の名前で個人ブログを運営しております○○(本名)と申します。
今回は、このブログ記事に掲載する挿絵をお願いしたく、ご連絡させていただきました。
*個人ブログ URL
https://gyahunkoubou.com
早速で恐縮ですが、挿絵の概要をお伝えします。
ぜひご検討いただけますと幸いです。
●挿絵の掲載について
ブログ内に、心霊ビデオシリーズのレビューをしている記事があります。
*記事のURL https://gyahunkoubou.com/noroi-no-video.html
記事には3つの大きな見出しがあり、それぞれの下に挿入する挿絵3点をお願いできればと思っております。
*具体的には、下記の見出しです。
・恐怖レベル〈ノーマル〉:異界のモノのふるまいに怯える
・恐怖レベル〈ハード〉:異形の邪悪な意志に背筋が凍る
・恐怖レベル〈スーパーハード〉:あの世からの使者に戦慄する
●挿絵の内容について
3点とも【女性の幽霊】のイメージでお願いします。
記事では、見出しごとに作品の“恐怖度”が高くなります。
そこで、
[A]ほとんど人間と変わらない幽霊
[B]ほぼバケモノと化した幽霊
[C]AとBの中間
といったふうに描き分けていただければと思っています。
背景は、
・なし(単色の塗り)
・“異界”をイメージした模様(効果線など)
・簡単な背景(廃墟、森、日本家屋など)
などをイメージしています。
3点ともカラーをイメージしていますが、(ホラー作品の紹介記事なので)あまり色を使わないモノトーンに近い色調がふさわしいかなとも思っています。
基本的に、ポーズ・構図などはおまかせしたいと思いますが、もう少し具体的な指示をご要望でしたら、私のほうでも一考します。
●イラストサイズについて
横1000×縦500ピクセル
解像度 150dpi以上
でお願いします。
●納品形式について
PSD形式がベストですが、JPG、PNG、AIなどでも構いません
●納期について
1か月後ぐらいまでにと考えていますが、個人のブログですので、ご都合に合わせられます。
●お支払いについて
3点合わせて
【10,000円】
でご検討いただければ幸いです。
以上、ご検討いただければと思います。
ご不明な点、ご要望などがありましたら、ご遠慮なくご連絡いただければと思います。
取り急ぎのご連絡となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
○○○(署名)
「掲載場所」「内容」「予算・納期・点数」といったポイントをおさえた依頼文になっていると思います。
しばらくして、お返事がありました。
はじめまして○○様、この度は相談メッセージありがとうございます。こちらこそお世話になります、只今URL先のブログも確認させて頂きました。
依頼内容で一点気になるところがございまして、恐れ入ります料金の件なのですが、3点全て単色背景での制作にさせて頂ければ10000円で承る事が出来るかと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
料金については当初の予算内ですから問題ありません。背景についてはこだわっていなかったので、これもOK。
「OKです。よろしくお願いします」と返事をして正式にイラストを依頼することになりました。
[実践その5]正式にプロジェクトをスタートさせた
サイトによって多少手順は異なるものの、いずれも発注者と受注者が承諾するとプロジェクトがスタートし、専用のページが作成されます。以降はそこでやりとりをするわけです。
なお、ココナラの場合は、料金を支払うことでプロジェクトが立ち上がります。
プロジェクト終了後に料金を払うサイトもあります。
[実践その6]イラストレーターさんからの質問に返信した
プロジェクトがスタートしてしばらくすると、イラストレーターさんから下のような提案がありました。
こんばんは、夜分遅くに失礼致します。
ご依頼内容の大まかなイラストイメージが定まりましたので、資料をお送りいたします。お手数ですが目を通していただき、他にご希望点などございましたらお申し付けくださいませ。
どうぞよろしくお願いします。
*添付資料はクリックで実際の画像を見ることができます。
前述のとおり、〈イラストの具体的なイメージ〉をこちらから伝えていなかった(伝えられなかった)ため、イラストレーターさんのほうから上記のようなイメージの提案をいただきました。
本来なら、このような資料を発注者が用意できるのが理想です。
イラストレーターさんに返信します。
タガッシュ 様
お世話になっております。
早々にイラストイメージの資料をご用意いただきましてありがとうございました。
私の好きなゲームのキャラクターを参考にしていただきありがとうございます(笑)。
イラストのイメージとしては、おおむね当初の想定どおりではあるのですが、あらためて考えると、造形が変わっていくだけでは、
「恐怖度が高まっていく」
という記事の挿絵としてのニュアンスが出せないような気がしてきました。
*ゲームの場合、造形が変わると難易度が変わるので「恐怖度」の変化は表わせるのですが、ブログの記事の挿絵ではわかりにくいかと思います。
そこで、「人間がバケモノに次第に変化していく」という当初のイメージを踏襲しつつ、「モンスター系ビジュアル」がお得意だというタガッシュ様の持ち味を生かす方法として、「構図やポーズで恐怖度の違いを表わす」ということにしてはどうかと考えました。
*詳細は添付の資料をご参照ください。
*ちなみに、「モンスター系」と「クリーチャー系」を使い分けていらっしゃいますでしょうか。(私のなかでは両者は同じ意味なのですが)
また、当初
[A]ほぼ人間
[B]ほぼバケモノ
[C]AとBの中間
としていたのですが、今後のやりとりで不都合が生じる恐れもあるので、
[A]ほぼ人間
[B]AとCの中間
[C]ほぼバケモノ
のように変更させてください。
以上、お手数をおかけしますが、引き続きよろしくお願いします。
○○(署名)
イラストレーターさんの提案によって、こちらのイメージもかなり固まってきますので、そのイメージを可能なかぎりお伝えすることです。
「この部分はご提案のとおりいきたい」「ここは変えてほしい」といった点をはっきりさせるのです。そうしないと、トラブルの素になってしまいます。
そのあとも、お互いが納得できるまで、何度か同じようなやりとりをしました。
[実践その7]イラストレーターさんのラフ(下描き)をチェックした
「イラストレーターさんに伝えるべきことは伝えた。あとは完成を待つばかり」とはいかないのが創作の世界です。発注してからイラストの完成までに依頼者がやるべきことがあります。
それが〈ラフ(下描き)〉のチェックです。それも徹底的に、両者が納得いくまで行なう必要があります。イラストの依頼におけるトラブルの多くは、この〈ラフ〉のやりとりで起こっているといっても過言ではありません。
「〈ラフ〉をチェックする」とはどういうこと?
大切なのは「修正可能な段階で修正する」ということです。それが〈ラフ〉の役割です。言い換えれば「完成した状態のものを直すのは手間と時間がかかる(最悪の場合、最初からやり直しになる)」のです。
遠慮せず〈ラフ〉を納得いくまで直してもらう
ここでのポイントは、「自分の納得いくまでラフを修正してもらう」ことです。カタチやポーズ、構図など、自分の気に入らない部分が少しでもあれば、遠慮なくそれを伝えます。
お互いのイメージが合致せず、やりとりの回数が多くなってしまうこともあります。もちろん、修正が少ないに越したことはありませんが、ラフであれば何度でもやり直しができます。逆に言えば、ラフがOKとなり、本番の作業に着手してもらってから修正をお願いするのは、厳密にいえばマナー違反なのです。
イラストレーターさんによっては、本番の修正は2回までとか、修正は別料金としている人もいます。それほど、本番着手後の修正は大変なのです。やむを得ない場合もあるでしょうが、仕上げに着手したら、それ以上は修正の注文をつけないことは、発注者が持つべき心構えといえます。
今回は、イラストレーターさんから下のように〈ラフ〉ができたとの連絡がありました。
○○様
お世話になっております。長らくお待たせいたしました、只今A・B・Cのビジュアルのラフが完成しました。顔のビジュアルと、腕の変異ビジュアルのラフをお送りしますので、ご確認のほどよろしくお願い致します。
ラフの内容をよく確認し、返信します。
タガッシュ 様
お世話になっております。
ラフありがとうございます。
全体的におどろおどろしい感じが漂っていて基本的な方向性は問題ないかと思います。
ただ、A、B、Cのいずれも「瞳」に生気が宿っている感じがするのが少し気になります。
とはいえ、これはラフだからそう見えるのかもしれず、むしろ本番の着色時などにご考慮いただければと思います。
*『死霊のはらわた』(1981年版)のバケモノみたいな目といえばおわかりになりますでしょうか。
また、Cですが、変形の仕方がやや「かっこいい」点も気になりました。やはり自分の意思で変化させているという感じがしてしまいます。
顔の突起部などがきっちり左右対称のため、そう思えるのかもしれません。
自分の意思とは無関係に変化しており、したがってもう少し「醜い」ほうが(たとえば左右対称でない造形のほうが)それらしい雰囲気が出る気がします。
腕の変形については、
左がB、右がC
でよいでしょうか。
全体的には問題ないと思いますが、Bについては、何本かの指は人間らしさが残っていたほうがそれらしい気がします。
Cについては、上記と同様に「かっこいい」感じがするので、当人としては不本意なほど醜い変形のしかたをしているほうがいいと思います。
以上、微妙なイメージの違いでなかなか表現が難しいとは思いますが、引き続きよろしくお願いします。
○○(署名)
今回は、造形・構図・造形のそれぞれについて「これ以上直すところはない」と思えるまで何度もやりとりを重ねました。
[実践その8]イラストレーターさんのラフにOKを出した
ラフが完全にOKとなったので、「本番を進めてください」とご連絡しました。
仕上げの作業に入ったあとも、イラストレーターさんからプロセスごとにチェックのお願いがきたので、それに返信しました。
こんばんは、お世話になっております。
線画の作業が完成いたしましたので、途中経過の報告に画像をお送りいたします。
これから色塗りをしていきます、完成までもう暫くお待ちくださいませ。
タガッシュ 様
お世話になっております。
ご報告ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いします。
○○(署名)
[実践その9]完成品をチェックしてOKを出した
何度かの中間報告を経て、ようやくイラストレーターさんから完成のご連絡をいただきました。
こんばんは、お世話になっております。
大変お待たせいたしました、只今イラストが完成し納品可能な状態となりました。
○○様のご希望するデータ形式でお送りしようと思っております、ご希望の形式はございますか?
もちろん、これに対して返信します。
タガッシュ 様
お世話になっております。
ご連絡ありがとうございました。
データ形式ですが、できればPSD形式でお願いします。厳しければJPEGかPNGでも構いません。
どうぞよろしくお願いします。
○○(署名)
早速、本番のデータをアップしていただきました。
こんばんは、お世話になっております。お返事遅くなり申し訳ございません。
データ形式の件、承知致しました。それではPSD形式でお送り致します。ご確認よろしくお願い致します。
*実際のデータはPSD形式ですが、上記の添付資料はJPEG形式に変換して掲載しています。
アップしていただいたデータについて以下の点を慎重にチェックします。
- ラフチェックの最後にお願いした修正が反映されているか
- ファイルのサイズ・形式・解像度は正しいか
- 修正してもらう点はないか(仕上げのしかたがお願いと異なるなど)
もちろん、まちがっていたり不明だったりする部分があれば連絡します(今回はそのようなことはありませんでした)。
問題がなければ、OKの返信をします。
タガッシュ 様
お世話になっております。
データの納品ありがとうございました。内容に問題はございません。
色を塗ると雰囲気も変わりますね。ブログ記事のクォリティもよりアップするかと思います。
イラストについては問題ありませんが、2点ほどご確認とご相談がございます。
まず、ご確認としましては、イラストを掲載する際にクレジットとしてタガッシュ様のお名前をお載せしたいと思いますが、問題はございますでしょうか。
また、もしウェブサイトやTwitterなどをお持ちでしたら、そちらへのリンクも掲載させていただこうと思いますが、いかがでしょうか。
このたびは長期にわたり、おつき合いいただきありがとうございました。
また機会がありましたら、ご協力いただければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
○○(署名)
イラストレーターさんのお名前は記事にしっかりクレジットするようにしたいものです。掲載の許諾をいただきんながら、サイトやTwitterアカウントなども聞いて載せるようにしてもよいでしょう。
[実践その10]プロジェクトを終了させた
プロジェクトを終了すれば、一連のイラストの依頼は終わりです。サイトによって異なりますが、イラストレーターさんが「納品終了」の操作をすることで、プロジェクトが閉じられます。
サイトによっては、料金を支払うことでプロジェクトが終了するケースもあります。
また、出品者(イラストレーター)を評価するよう促されるので、ぜひ書き込むようにしましょう。
今回は以下のようにコメントしました。
こちらがこだわったせいもあり、長期間のやりとりになってしまいましたが、辛抱強くおつき合いいただきました。随時、進捗をご報告いただいたおかげで、安心して進めることができました。また機会があればお願いしたいと思っています。
以上、駆け足でしたが、実際にブログのイラストを依頼したときの様子をレポートしました。
[まとめ]イラストレーターさんの立場に立って考えよう
最後にあらためて考えてみましょう。イラストを上手に依頼するコツとは?
具体的なことはこれまで述べてきたとおりですが、すべてに共通するのは「イラストレーターさんの立場に立って考える」ことだと思います。たとえば、以下のような点を心がけます。
- 発注者である自分の考えをしっかりまとめる
- わからないこと、納得できないことは、イラストレーターさんに質問したり相談したりする
- 相手からの連絡には速やかに丁寧に返信する
これらは、イラストの依頼にかぎらず、どんな仕事にも通用する心構えといえますね。
今回はブログ記事のイメージイラストをお願いしたわけですが、「発注サイト」を利用すれば、Twitterのアイコンや小説の同人誌の表紙なども気軽に依頼できます。
ぜひみなさんも今回の記事を参考にイラストを上手に依頼し、自分のコンテンツを盛り上げてみてください。
*イラスト制作および本記事への掲載にご協力いただいたタガッシュ様に感謝いたします。ありがとうございました。
参考 タガッシュさん(会社員)のプロフィールココナラ*イラストを掲載したブログはこちら。
参考 【ほんとにあった!呪いのビデオ】おわかりいただける最恐映像42選[随時更新]ぎゃふん工房の作品レビュー*過去にも自作の小説のイラストをお願いしたことがあります。
参考 絵師の知り合いがいなくても萌えイラストを頼める【天使の街・創作メモ】ぎゃふん工房の作品レビュー
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