昨今のゲームは、映像技術の発達によりリアルな表現が可能になりました。とくにFPS(ファースト・パーソン・シューティングゲーム)のような3Dゲームでは、あたかもプレイヤーがその場にいるかのように振る舞えるため、「3D酔い」と呼ばれる症状を訴える人も多くなっています。
さらに、最近はVR(ヴァーチャル・リアリティ)のゲームも登場し、同じように「VR酔い」に悩まされる人もいます。
なにを隠そう、ゲーマー暦30年以上の私も、いままで「3D酔い」は経験ありませんでしたが、最近「VR酔い」で長時間プレイできなくなってしまうという現実に直面しました。
ここでは、私と同じような悩みを持つ人に向けて、3D酔い・VR酔いのメカニズムや対処法・予防法を紹介していきたいと思います。
あなたのゲームライフのお役に立てれば幸いです。
目次
【症状】3D酔い・VR酔いになるとどうなる?
実際、3D酔い・VR酔いになると、カラダにどんな変化が起こるのでしょうか。大まかな症状として「前兆」「発症」「悪化」に分けられます。
[前兆]めまい・生つば・あくび
3D酔い・VR酔いの前兆としては、まず〈めまい〉や〈生つば〉〈あくび〉といった症状が現われます。
ただ、ゲーム中にこのような症状が現われたとしても、3D酔い・VR酔いとは思わないかもしれません。
[発症]頭痛・顔面蒼白・冷や汗・吐き気・胃の不快感
さらに症状が進むと、〈頭痛〉や〈顔面蒼白〉〈冷や汗〉〈吐き気〉〈胃の不快感〉といった症状が現われてきます。
ここまでくると、ゲームを続けること自体が苦痛になってくるので、3D酔い・VR酔いを自覚できるはずです。
[悪化]嘔吐・脱水症状
症状が悪化すると、〈嘔吐〉を引き起こすことがあります。何度も嘔吐を繰り返せば、〈脱水症状〉に陥る可能性もあります。
もちろん、ここまでくると、プレイを続行することはほぼ無理でしょう。
これらの症状には個人差があり、3DゲームやVRゲームをプレイした人が必ず3D酔い・VR酔いになるわけではありません(実際、私は3D酔いになったことはなく、VRゲームで初めて「酔い」を経験しました)。
のちに述べるように、その日の体調やプレイする環境なども大きく関係しているようです。
【原因】3D酔いやVR酔いはなぜ起こる?
なぜ3DゲームやVRゲームをプレイすると、上記のような症状を引き起こすのでしょうか。
原因は視覚・聴覚とカラダの感覚のズレ
人は、カラダの位置や揺れ、動くスピードなどを目や耳で関知し、その情報を脳へと送っています。ゲームの画面では主人公が激しいアクションをしているのに、それを操作しているプレイヤーのカラダはまったく動いていないので、情報と実際の感覚にズレが生じます。すると、自律神経がうまく働かず、3D酔い・VR酔いを引き起こしてしまうと考えられています。
ゲームの表現技術が発達し過ぎたことの弊害といえそうですが、だからこそリアルなゲーム体験ができるわけです。
不安やストレスなどココロの原因も
ほかにも、精神的な不安が3D酔い・VR酔いを誘発したり助長したりする可能性も考えられます。
とくに3DゲームやVRゲームは、初めてプレイする人に不安やプレッシャーを与え、それが3D酔い・VR酔いの原因になっているのかもしれません。
また、3DゲームやVRゲームは「武器を持って敵と戦う」という内容のものも多く、無意識のうちにココロとカラダが緊張しているのでしょう。
『バイオハザード7』のようなホラーゲームの場合、そのグロテスクな描写そのものが気持ちの悪さを誘発していると思われます。
【対処】3D酔いやVR酔いになってしまったら?
では、ゲームのプレイ中に3D酔い・VR酔いになってしまったら、どうしたらよいのでしょうか? 対処法を紹介します。
プレイを中断する
いったん3D酔い・VR酔いになると、そのままプレイを続けて症状が改善することはありません。まずは、いったんプレイを中断することが大切です。
前述のとおり、3D酔い・VR酔いの前兆として〈めまい〉〈生つば〉〈あくび〉といった症状が現われたら、「気持ち悪くなる」前にプレイを中断することも効果的でしょう。
モニターから離れリフレッシュする
3D酔い・VR酔いの原因は、ゲームの世界と現実の世界とのズレなので、目や耳から入る情報を現実の世界にもどし、脳をリセットしましょう。そうすることで、症状は改善されていくはずです。
モニターから目線をはずし、部屋の壁を見たり、窓の外を眺めたりします。カラダをストレッチしたり、窓を開けて空気を吸ったりするのもよいでしょう。散歩に出かければ、カラダを動かしながら新鮮な空気を吸えるので一石二鳥です。
それでも改善しない場合は、ベッドに横になったり、仮眠をとったりしてみましょう。
嘔吐は我慢しない
嘔吐は我慢せず、吐いてしまったほうがラクになります。吐いたあとは口をすすぎ、スッキリさせましょう。
酔い止めを飲む
いわゆる乗り物酔いの薬も3D酔い・VR酔いに効果があります。
酔い止めには、平衡感覚や自律神経の乱れを調整する働きがあり、耳や目から入るゲーム世界の情報と現実世界の感覚とのズレを正してくれます。とくに、〈めまい〉や〈吐き気〉を改善する効果が期待できます。
なお、酔い止めは、水やぬるま湯で服用しましょう。お茶やジュースだと効果が得られない場合があります。
▼市販の酔い止めを用いるのもひとつの手。
アネロン「ニスキャップ」(エスエス製薬)
【予防】3D酔い・VR酔いにならないためには?
では、3D酔い・VR酔いを防ぐにはどうしたらよいでしょうか。症状をゼロにすることは難しいでしょうが、少しでも軽くする方法を紹介します。
プレイ前の準備
体調を整える
体調が悪いと、3D酔い・VR酔いになりやすいようです。十分な睡眠をとり、疲れをとっておきましょう。
私の経験では、一日の疲れがたまる夜よりは、睡眠で疲れを落とした午前中にプレイするほうがVR酔いを起こしにくいと感じています。
消化の良い食べ物をとる
空腹や食べ過ぎを避け、消化に良い食べ物をとって胃腸の調子を整えておきましょう。吐き気などはこれで多少なりとも抑えられるはずです。
酔い止め効果のあるものを食べる
プレイ中にお腹が空くようなら、キャンディやチョコ、ガムを口にしておくといいでしょう。これらの食べ物を食べると血糖値が上がるので、脳の働きが活性化します。また、噛むことによる覚醒効果が酔いの防止に役立つと言われています。
また、ペパーミントティーは胃の不快感を軽減する効果があるとされています。しょうがは吐き気を抑える効果があると言われており、すり下ろししょうがを入れた紅茶やハーブのジンジャーティなどをプレイ前またはプレイ中に飲むのもおすすめです。
酔い止めを飲む
プレイを始める前に酔い止めを服用しておくと、3D酔い・VR酔いを改善する効果が期待できます。
プレイ中の心がけ
部屋を明るくする・モニターから離れる
3D酔いの原因は、ゲームの世界と現実の世界のズレです。そこで、プレイ中は現実世界の情報も脳に送ってあげることで、3D酔いになりにくくなります。
具体的には、部屋を明るくしたり、モニターから離れて座ったりして、画面のまわりの様子も視界に入るようにします。
*VRゲームの場合は、この方法が実践できないので、以下を試しましょう。もちろん、以下の方法は3D酔いにも有効です。
ゲームの設定を見直す
最近のゲームでは、主人公の移動速度やカメラの揺れ方・距離などを細かく設定できるようになっています。これらの設定を見直してみるとよいでしょう。
設定はゲームによって異なりますが、3Dゲームの場合は、「カメラの移動速度を遅くする」のが基本となるかと思います。
ただし、VRゲームの場合は、私の経験では視点の速度が遅いと酔いやすくなるようです。ゆっくり歩いて探索していると酔いやすく、敵と交戦し激しく動いているとあまり酔わない感じです。
このあたりは、ゲームごとに、またプレイヤーによっても変わるでしょうから、いろいろ試行錯誤してみましょう。
▼VRゲーム『バイオハザード7』のデフォルトの設定。これがもっともVR酔いしにくいと言われています。

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長時間プレイしない
当然ながら、長時間プレイしていれば、症状は悪化していきます。30分〜1時間プレイしたら休憩し、上記のリフレッシュをしましょう。症状が軽ければ、それだけ回復も早いはずです。
3Dゲーム・VRゲームでなくても、テレビゲームを長時間プレイするのは避けたいところです。
3Dゲーム・VRゲームに慣れる
3DゲームやVRゲームをプレイしているうちに、カラダやココロが慣れて、酔いにくくなっていくようです。上記の方法を併用しながら、自分のカラダとココロが慣れていくのを待つのもひとつの考え方でしょう。
▼以下は、『バイオハザード7』の開発者・中西晃史氏の言葉です。
中西 あまりメディアでは伝わっていないと思うのですが、人間は酔いに慣れるんですよ。『バイオ7』のようなゲームで酔う原因のひとつとしては、我々がふだんの生活で歩くときの視界の動きと、VR世界の動きのギャップにあるんです。逆にいうと、ゲームの移動速度を脳が理解すれば途端に酔わなくなるんです。なので、VRでの移動の感覚をイメージして歩けるようになれば平気になります。もちろん、個人差もありますし、酔いの原因はそれだけではないのですが。最初はちょっと無理かなと思っても、オプションを設定してみたり、時間を置いて慣れていけば、楽しめる可能性があります。
『バイオハザード7 レジデント イービル』取材リポート3 竹内潤氏を始めとする開発のキーマンにインタビューしてみた! https://www.famitsu.com/news/201612/01121566.html
私も最近はほとんど酔わず(酔っても軽症)、プレイできる時間も伸びてきました。ゲームをクリアするころにはまったく酔わなくなるのかもしれません。
【注意】病気の可能性も?
ここで紹介した方法で改善されない場合は、目や耳、脳に関係する病気の可能性もあるため注意が必要です。症状があまりに重い場合は、医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けることを検討してください。
3Dゲーム・VRゲームは、最近になって発達してきたゲーム体験なので、開発者もプレイヤーも、より楽しく遊ぶ方法を試行錯誤している段階です。
プレイヤーとしては、ここで紹介した方法を実践しながら、3Dゲーム・VRゲームの魅力を堪能していきましょう!
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